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■安徽省南部の古代集落群(あんきしょうなんぶ)
・登録区分 文化遺産
・登録年 2000年

西逓村の牌坊
■イ県の概要
黟県(いけん)は、中国・安徽省・黄山市管轄の県。面積847平方キロメートル・人口10万である。黟県は黄山市で最も小さな県であり、最古の県でもある。郵便番号は245500。県人民政府は碧陽鎮にある。古称は黝・広徳国・朔鹵。
黟県は紀元前221年に建てられた。
黟県の可耕地は40.3平方キロメートル・山地は704平方キロメートルであり、76.3%が森林に覆われている。年平均気温は15.8℃・降水量1,686ミリメートル・無霜期は212〜213日。茶、桑など衣料作物の栽培が盛ん。特産はシイタケ・木耳・シナガヤの実などである。
16世紀には商業が盛んなことで知られ、4千棟以上の精巧な建築が行われ、その様式は風格明朗な「皖南民居」である。皖南(かんなん)は安徽省南部。世界文化遺産に指定された西遞村・宏村も黟県内にある。
映画『臥虎蔵龍』・日本における題『グリーン・デスティニー』は宏村で撮影された。このほか、『菊豆』『復活的罪悪』『南京的基督』『大転折』『徽商』『風月』などにも黟県で撮影されたシーンがある。
■地図

安徽省
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■歴史
・名称
黟県の古称は黝(「黟」の異体字)であり、紀元前221年(秦朝26年)に作られた。紀元前19年6月、前漢の成帝の時代、黝県は広徳国と改称された。鴻嘉5年(紀元前12年ごろ)、広徳国が廃されて再び黝県となる。王莽は西暦10年(始建国2年)、黝県を朔鹵と改称し丹陽郡の一部とした。西暦25年(建武元年)、再び黝県に戻された。
・行政区分
1950年に黄山市太平県(今は無い)、石台県に属していた美溪・柯村・宏潭が黟県に編入された。1958年1月2日、祁門県に合併され、黟県県委(中国共産党県支部)と県政府機関も転出した。1959年4月5日、国務院の批准を受け再び黟県が設置された。
■自然地理
黟県の北部には枕黄山、南部には白岳があり、四方が山に囲われた盆地である。山は黄山につながっていて外界と隔てられているため古くから「小桃源」と呼ばれていた。
黟県には現在にも古民居3,600棟が保護されており、皖南の中心地である。西逓・宏村・南屏・関麓・屏山に残る古民居は、厳謹・工芸精湛なものであり、西逓・宏村は世界遺産に指定されている。
■行政区画
3鎮と9郷を管轄とする。
鎮:碧陽鎮・際聯鎮・漁亭鎮
郷:竜江郷・碧山郷・西武郷・柯村郷・美渓郷・宏潭郷・東源郷・泗渓郷・洪星郷
・西遞村
西遞は11世紀、宋朝の元祐年間にある河川の西岸にできた。そのため元の名を「西川」といった。物資輸送の駅として使用されたため西遞(西逓・「逓」は宿場)と呼ばれるようになり、また「桃花源裡人家」とも呼ばれた。
この村を支えていたのは胡氏である。10世紀、唐の昭宗の子が変乱から逃れてこの地に隠れ住み胡姓を称した。胡氏は1465年に商売を始めて成功し、土木・建築・修祠・道路整備・架橋などを行った。17世紀中ごろ、胡氏から官僚が出たためさらに発展した。18世紀から19世紀にかけて、西遞の繁栄は頂点を極め600もの豪邸が作られた。
西遞村の中心には東西を貫く幹線道路があり、その両脇に並行する道路との間に沢山の路地がある。敬愛堂・履福堂・刺史牌樓の公共施設も設けられていた。現在でも明清建築の124棟が観光用に保全されており、そのほとんどが一般に公開されている。そのほかの主要建築物に、1578年に作られた青石牌坊・1691年に作られた大夫第(医師屋敷)などがある。
2000年11月30日、オーストラリア・ケアンズで行われた第24回ユネスコ世界遺産委員会により、「安徽省南部の古代集落群」の西遞村・宏村が世界文化遺産に登録された。
■経済
黟県はその地理環境を生かして観光を主要産業としている。2003年には旅行者は111万人に達し、総収入は2.7億元でありGDPの50%以上を占める。観光業のほか、絹糸生産・農産物加工・土産物の製造がある。
・製糸紡織業
絹関係の産業は観光を除いて黟県の基幹産業である。80年代初めに桑の植生が行われ、それから20年で桑園4.5万畝・繭の年生産量2千トンとなっている。製糸会社も2つあり(生糸の年生産量は400トン)、これは安徽省で第2位である。また、練糸の年生産量は260トンで、これは安徽省で第1位である。絹関係の産業総収入は1.5億元以上に達する。
・農業副産物加工
黟県には農業副産物加工の企業も多い。桃源罐头食品有限公司は、糖水板栗(むき栗の水煮)・箬叶(クマザサの葉・香り付けに使う)・乾燥野菜の千切り・筍の缶詰などの生産を行っており、とりわけ糖水板栗の生産量は中国第1で、その95%が輸出用である。また、黟県臘八豆腐・宏潭豆腐乳などが伝統的手工業で生産されており、中国の大手スーパーなど入手できる。
黟県は昔から茶の生産地として名高く、黄山毛峰・五溪香芽・西逓翠眉などの品種が知られる。また、黟県泗溪郷の香榧は安徽省を代表する名産品であり、とりわけ米榧と尚榧が観光客に人気がある。
・土産物の製造
黟県の観光業の発展に伴って土産物製造業も発展を続けた。始めは個人による簡単な工芸品から始まり、後に金星工芸品廠・黄山市民間工芸品有限公司などが中心になって加工企業も100に達するようになった。とりわけ文房四宝(筆・墨・紙・硯)と呼ばれる、木彫り・レンガ彫り・石彫りの製品は日本や韓国に輸出されるほか、中国の20以上の省市で売られている。黟県は中国東部の観光用工芸品生産地、貿易拠点として発展を続けている。
・その他の産業
黟県の機械電力設備・玩具・木竹製品産業の始まりは比較的早い。軸受・長絨玩具・高性能磁性材・小型机などが生産されており、それなりの規模に発展している。黟県の竹材合板工場は、中国でも比較的初期に始まっており、その生産技術は今でも高い。
■観光
黟県には世界文化遺産がある。「桃花源里人家」と呼ばれる西遞・「中国画里郷村」と呼ばれる宏村である。
世界文化遺産への登録を申請中の場所も多い。菊豆ゆかりの郷である南屏・神秘的な八大家連体建築の関麓・古黟の風水村(舒秀文の故居)屏山である。
その他、徽州第一木雕樓・塔川秋色・木坑竹海・清末の名妓賽金花故居・陶淵明後裔の居住地陶嶺村落・宏村龍池湾農耕文化園などが著名である。
また、五溪山自然保護区・西遞古石窟群・鴛鴦谷・十里桃花長廊等も観光地として開発中である。
■特産品
苦丁茶・香榧・葛粉(泗溪三宝)
・苦丁茶
日本でも近年、苦い茶の代表として知られている。
・香榧
シナガヤの実。果肉に豊富な脂肪分・蛋白質・糖質・炭水化物を含み、ビタミン・不飽和脂肪酸も豊富である。
・臘八豆腐
黟県の家庭風味の特産品であり、中国暦12月8日(臘八)前後にはどの家庭も豆腐を作り、これを乾燥させたものを臘八豆腐としている。
・食桃
良質の籼(大陸性の稲)に一定比率でもち米を混ぜて挽いた米粉。水を加えてダンゴにし蒸して食用とする。
■詩文での描写
宋代の文学家陶淵明は、黟県の風景を『桃花源記』の中で描写している。
唐代の詩人李白により、
「黟県小桃源,煙霞百里間,地多霊草木,人尚古衣冠」
と詠われている。

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